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炭焼き窯の作り方
                                

 
 
はじめに
 日本の山村では、古くから「炭焼き」が盛んに行われ、炭を「資源」として有効に活用してきた歴史が
あります。規格外の間伐材に限らず、どのような木や竹であっても、たいがいのものはすべて炭にすること
ができます。そして熱エネルギー、土壌改良、水の浄化、湿度調整など多目的に利用できます。また、炭に
することで、その重量の約3倍の二酸化炭素を固定しますので、問題となっているCO
の対応策ともなり
ます。炭をより多く使用することで森が整備され、森の自然環境はよくなります。今日では、炭は地球環境
を守る優れたアイテムとして、見直されています。
 ここで、ご紹介します「炭焼き窯」は、環境に負荷をかけないように、それ自体が昔ながらのエコナ資材
で建設されていることを付け加えておきたいと思います。
それでは、これから『炭焼き窯の作り方』の説明を、ほぼ私たちが作業した順番に沿って進めていきます。
 



作業手順

1 窯の材料集め
2 窯の穴掘り
3 焚口、煙道、蒸発装置を作ります
4 窯のドームを作ります
5 屋根を作ります
6 最後の仕上げです



 作業日程
   
  窯の穴掘り〜窯のドーム完成まで 10日間程度
 
 
1 まずは窯の材料集めから
 
 @ 窯のドームをつくる主原料として灰土(火山
  灰土)を山から採取します。 灰土はできるだ
  けきめの細かいものが 良いようです。
   採取量はおよそ軽トラ2杯半くらいです。
   灰土は熱に強く、伸縮性の乏しいので ひび割
  れが生じにくいのが特徴です。 なお、地域に
  よっては灰土がないので 赤土や粘土などを使
  用しています。

   
 A 窯の焚口に使う灰石(凝灰石)を集めます。
   これは庭の隅に置かれていたものをいただき
   ました。
   写真の下の2本が柱で、上の1本がその上に
   かぶせる石です。結構な重量がありました。
   灰石はできるだけやわらかいものが熱に強い
   ようです。普通のコンクリートや硬い石では
   割れてしまいます。
   
B  灰石は上記の3本では足りませんので、不足
  分は地元の石屋さんから廃棄した灰石をいた
  だくことにしました。
   
 C これは石屋さんからいただいた灰石を運んだ
   ものです。
   
2 窯の穴掘り  
   
@  窯をつくる場所としては、近くに民家がない
  こと、風があたらない場所であること、地下水
  などがなく、比較的乾燥している赤土や粘土
  などの土壌であることが条件として求められ
  ます。また、窯の形はイチジク型が良いと
  言われています。最初に円形に竹串を打って
  堀り進めます。
  この地域の炭焼き名人の話では、子宮型とも
  言っています。
   
A 重機を使わず、手掘りをするのは形を壊さない
  ためです。1度掘りすぎてしまうと補修が大変
  です。窯の焚口も慎重に掘り進めます。

   
B 写真でドームの袖の部分の土が削られている
  のがおわかりでしょうか?この付近の上部の土
  壌は燃えやすい腐葉土であるため、その部分を
  完全に除去してしまいます。
  これで、窯の穴がおおむね完成しました。
 
  
   
3 焚火口、煙道、蒸気装置を作ります。
   
      @ (左写真)
  これは焚口です。用意した3つの灰石を上手に
  組み合わせることができました。
  焚口の幅は大人がやっとくぐれる程度です。

A (右写真)
  これは焚口の石の全面を補強しているところで
  す。


   
 B 焚口と反対側の縦の溝は煙道で、写真上部
   には炭焼き時に使用する煙突(土管)が
  見えています。 
   
  C 煙突の下の部分から溝が中央部の円形の穴に
  続いています。炭焼き時には、薪から大量の
  水分が煙道に出てきて窯の内部にたまります。
  円形の穴は、その水分を蒸発させるための
  装置です。 
   
D 煙道をより詳細に見てみましょう。
  煙道の縦穴を作るために溝の手前に灰石を
  積み上げ、表面には赤土を塗って(叩きつけ
  て)行きます。 赤土には石灰を少量混ぜて
  います。なお、煙道の下部から鉄パイプが
  敷設されていますが、これは水を蒸発装置に
  導くためのパイプです
 ※赤土には少量の石灰を混ぜて、こぶしの半分
  くらいの団子をつくり投げて叩きつけます。
  これは接着効果を増すための昔からの方法
  です。
 
   
E 煙道の最上部です。 
   
F 最上部の写真をさらにもう1枚。 
   
G 煙道下から蒸発装置までパイプを敷設した
  場面です。パイプの周辺にも灰石のかけらを
  置いて、水の通りをよくします。灰石の
  かけらの周辺には小石を詰め、その上に
  新聞紙で覆いをし、赤土をかぶせて完成です。
 
   
H これは煙道が完成した写真です。 

   
I 煙道の前で、火を焚いています。煙の通りが
  良いか確かめるためと、周辺を固めるため
  です。 
   
  
   
   
 4 窯のドームを作ります。  
   
 炭焼きをするように、ドーム型に材木(炭の材料となる原木)を積み上げ、その上に灰土を置いて、最後
に窯に火を入れ、ドームを焼き固めます。 
@ 窯の底部分に割った孟宗竹を敷き詰め、空気
  の通りをよくしました。また、煙道(壁の
  黒い部分)の前にはこの部分の壁が壊れると
  いけないので、丸太を2本立てかけて保護
  しました。なお、内壁に四角い穴があります
  が、これはお花炭作りに使うスペースです。
  ※ お花炭は、菓子箱などのスチール缶に
  松ぼっくり、竹の枝、木の葉、カボチャなど
  好みの材料を入れて焼いた装飾用の炭のこと
  です。
   
A 原木を隙間の無いように立てていきます。
  ちなみに原木の長さは73cm。
  この長さは、今後炭焼きを行う時も同じ長さ
  です。
   
 B すっかり全面に立て終わりました。
   
C これからの作業で動かないように、焚口上部
  の灰石の前に杭を打って固定しているところ
  です。この辺は、なかなか細かいところです
  ね。

   
D さらに原木をのせていきます。今度は寝かせ
  ていますが方角にご注意ください。 
   
  E 角の部分はチェーンソーでカットして形を
  整えます。これも細工の細かいところです。 

   
   
F 出来上がりを考えて下部に大きな原木を、
  上部には小さい原木をのせています。
   
G 小さな木切れを乗せて、納得できる程度に
  ドームの原形が出来上がったようです。 
   
 H ドームの上に慎重にコモを被せます。
  できるだけ丈夫な布が必要です。 
   
   
 I コモの上に用意した灰土(全部で2俵程度)
  を30cm程度の厚さに乗せていきます。袖の
  部分の形にご注意ください。なお、天井はやや
  薄く、下方はやや厚くします。
 ※ 灰土はあらかじめふるいにかけて、少量の
  石灰と少量の水を加えています。水は多すぎ
  るとよくないようです。
   
 J 厚さが均一になるように慎重に作業を進めま
  す。
   
   K ドームの全面に灰土を乗せました。
   
  L 次に、専門の道具で叩きます。
   
 M この作業は相当念入りに行います。水が
  足りない場合は、ジョウロで水を加えます。
 
   
 N 均一の力で叩く必要があるため、最後はベテ
ランの独り舞台です。
   
 O これでおおかた、完成に近づきました。
   
 P 最後は、焚口の障子作りです。障子は炭焼き
  を行うたびに新たにレンガを作ります。
  今回は、灰石を利用しましたが、通常はレンガ
  を使っています。写真のように隙間のできない
  ように石灰を混ぜた赤土を打ち付けます。
  なお、障子は直接火が通らないように2重構造
  になっています。写真は奥の障子を作っている
  ところで、上部に熱風の通る穴を設けます。
 
   
     Q (左写真)
  奥の障子の完成写真です。写真では、はっきり
  とわかりませんが一番下の灰石に見えるところ
  は、実は平面の地面で、下から2番目の白く見
  えるのは、厚めのコンクリートブロックで高さ
  は約30cmです。つまり、窯の内部より焚口
  は30cm低い位置にあります。
R (右写真)
  障子のレンガや灰石を支えるのはL字鋼です。
  なお、L字鋼は左右の灰石に差し込んで使用し
  ますので、灰石には細工をする必要があります
  。言い忘れましたが、焚口は窯の底部よりやや
  低くしています。おわかりでしょうか。
   
   
  いよいよ火入れをして完成といいたいところですが、土窯なので雨が大敵です。急いで屋根を造らなけれ
ばなりません。
 
   
  
   
  5 屋根を作ります
   
   屋根は昔風の造りとすることにしました。見た目もよいし、何よりもエコな資材で経済的でもあります。
また、市販の直線的な資材に比べて、木や竹などの材料を使うと風が抑えられる効果もあるそうです。
   
 @ 川原でヨシを採取しました。軽トラで4台分
  くらいです。その他の材料としては、ヒノキの
  間伐材、角材、小笹を軽トラで3台分、真竹、
  稲ワラなどです。
   
 A 屋根の原形を作ります。
   
 B 原型の完成です。
   
 C まず、小笹を束にしたものを作り、乗せてい
  きます。(ばらのまま小笹を乗せるよりも、束
  ねておいた方がうまくいきます。
 
   
 D 前の工程の続きです。
   
   E 小笹の束をほどいてこのように縛っていきま
  す。
   
 F その上にヨシの束を乗せます。小笹とは反対
  向きですのでご注意。(ヨシは小笹と同じで束
  のまま乗せて、後でほどきます)
 
   
 G 写真のように束をほどいてから縛ります。
   
 H さらにその上に稲ワラの束を乗せて縛ります
   
 I これでおおかた完成です。
   
   
  
   
 6 最後の仕上げです
   
  
   
@ 窯の焚口にはご神酒が、端には塩が置かれま
  した。
   
A 煙突を立て焚口に火を入れました。
   
B どうやら煙突の煙も順調のようです。
   
C 炭焼きが順調に進んでいます。 
   
D 一安心で写真に納まっています。すっかり暗く
  なりました。 
   
   E (左写真)
  2日後、煙の温度も250℃に達し、焚口を狭
  めました。

  (右写真)
  焚口をふさいだところです。前の障子を閉めま
  した。
   
F 障子の前にさらに土を置きます。
   
G  完全に前を塞ぎました。
   
H 火入れが年末であったので、翌年正月明けに窯
 を開けました。 
   
  I どうやらまずまずの炭ができているようです。
   
J いい炭ができました。窯も完成です。
   
K 窯の完成です。(外観)
   
  
   
  おわりに

かつて私たちは、炭焼き窯を自分たちの手で作ってみたいと思って資料を探した時期がありました。
しかし、ネットや図書でいくら探しても満足のいくような資料には出会えませんでした。そういった少し困
った経験があったので、私たちが自ら炭焼き窯作りを行った際に、その一連の行程を写真として残していた
ものを、このたび公開することにしました。もちろん窯作りに関しては、私たちはまったくの素人集団です
。けれども、地元の炭焼き名人に、窯作りを懇切丁寧な指導をしてもらいながら作ったものであり、出来栄
えも、名人の保証するところですのでご安心ください。
 なお、炭焼き窯の形状や素材については、地域によって異なるようです。
多分その地域でよく作られてきた窯が、よい窯であろうと思われますから、あまりこの資料にとらわれない
ほうがよいのかもしれません。
 森林を守る活動に取り組んでいらっしゃる各地の皆様方のご健闘とますますのご発展を祈念申し上げてい
ます。
 窯の出来栄えに反して、この資料では、わかりにくい部分も多いのではないかと案じられます。
 問い合わせやご意見がありましたら、お気軽に本会事務局まで、ご一報をお願いします。

                             平成21年秋  NPO法人碧い海の会


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 当会では、炭焼き窯を使って木炭や竹炭などを作っています。
 作業はNPO法人碧い海の会のブログに掲載されていますので、ご覧ください。
 また、炭焼きについてのみ検索したい場合には、ブログの右側に検索機能がありますので「炭焼き」等
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